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今日は修理についてのお話です。
先日の奈良近鉄での催事の際、ご使用いただいているお財布の糸が切れたということで、修理のご依頼をいただきました。
修理内容としては、お財布本体外面の糸切れ修理となります。
合わせてホック修理などもさせていただいたので、そこも含めてご紹介したいと思います。

目次

糸切れ修理

まず糸切れのおこった箇所ですが、本体外側下部の縫製部分です。

どうしても、本体外側はズボンのポケットなどと干渉するため、他の部分と比べると糸切れが起こりやすくなりますが、製作する際の工程的には最終段階なので、修理も比較的容易な場合が多いです。

内側から見たところ

この「コンパクト二つ折り財布【Aoi-coin】の場合、外側に入る縫製はこの部分のみになりますが、特に今回糸が切れた側が小銭入れパーツ革なのでパーツに重みがかかりやすいことで負荷がかかったことが考えられます。

まず切れた糸を一目一目解いていきます。

糸を全て解いたら、開いてしまった部分にノリをつけて仮止めをします。
この際、針穴の位置が上下でズレてしまわないように位置をきっちりと合わせます。

少し置いて、ノリが乾いたら縫製をし直します。
元々の穴から外れることのないように丁寧に縫わないといけないので、新しいものを作るよりも、修理の方が難しい部分です。

縫製ができたら糸止めをして、この部分の修理は完了です。

ホック交換

続いてホックの交換です。
こちらは今回のご依頼内容にはなかったのですが、ホックの中にあるバネが緩んでいたので、パーツ交換をしました。
このホックのパーツはどうしてもご使用いただく中で緩くなってしまう部分です。
金具そのものを丈夫にする、ということは出来ないので、普段から製品の構造を考える際に、そもそも交換しやすい部分に取り付けることを心がけています。

交換前のホック。
真ん中の穴の中に縦にバネパーツが2本あり、それで挟みこむことでホックが留まるのですが、このホックでは向かって右側のバネが緩んで見えづらくなっています。

「くい切り」や「ニッパー」などの道具を使い、ホックを割って取り外します。

取り外したら、新品のものを取り付けます。

取り付け完了です。
真ん中の穴の中に、縦に2本左右均等にバネが見えます。

オイルケア

基本的には油分の多い革で、使い続けていただいている限りはあえてオイルを塗ることを推奨していませんが、今回季節的なこともあってか少し表面に乾燥も見られたので、オイルケアもしました。

まず全体に軽くブラッシングをして、表面についた微細なゴミを取ります。
ブラシは馬毛のものなど、柔らかいものを使用してください。

次にオイルをクロスに少しだけつけて全体に薄く、なるべく均一に塗り込んでいきます。
この際、どうしても最初に塗った部分だけ濃くなったりしますが、時間が経つとすぐに浸透して色ムラはわからなくなるのであまり気にせずに、手早く塗り込みます。

糸にオイルがつくことを避ける方もいるのですが、むしろ糸にもオイルを染み込ませることで、糸の撚りが戻りにくくなり、糸切れ防止にもつながるので、糸にもオイルを塗り込みます。

最後に乾いた柔らかい布でやさしく全体のべたつきを拭き取ってください。

そんなに特殊な革ではないので、特別なオイルである必要はなく、よく流通している「ミンクオイル」で十分です。
もしどこかのお店で購入する際は、「タンニンなめし」の革であることを伝えて、お店の方に相談したら良いかと思います。
尚、黒や茶色など色のついたオイルもありますが、「無色」のものを選んでください。
汚れをとるクリームなどもありますが、革との相性もあるので、最初に書いたようにブラシで汚れをとることをオススメしています。
初めてオイルを塗る際には、目立たない部分に少し塗ってみて、時間をおいて確認し、シミになっていないかご確認ください。
油分の多い革なので、塗りすぎにはご注意ください。

また普段からお手入れする場合も、オイルを塗るのは多くても一ヶ月に一回程度で十分です。

新品との比較

以上で今回のお財布修理は完了しました。
最後に、新品の同製品と比較して写真を撮ってみました。

左:約2年使用 右:新品

約2年ほどご使用とのこと。
ツヤツヤになって、四隅が丸くなり、とてもいい雰囲気になっています。
ご使用の頻度や、使い方によってエイジングの仕方も大きく変わってきます。
今回修理させていただいたものは、おそらくポケットに入れてのご使用が多いかと思いますが、色味も深くなり、このカーキの色の魅力がより出ていました。
形はとても気に入っていると言っていただいたので、今回の修理でまた長くご使用いただけると幸いです。

*今回の修理内容の範囲については、ご使用後の経過年数に関わらず無料で修理いたします。(送料別途)
大まかな目安として、解体の必要のない修理は無料にて承っております。
解体が必要なものについては、その程度によって、その都度お見積もりいたします。
メールにて写真を送っていただいての見積もりも可能ですので、ご希望がありましたら、お問い合わせください。

*ご購入後一年以内のもので、通常使用範囲内であればいかなる修理も無料にて受け付けております。

*TSUKIKUSA製品以外のものについては修理を受け付けておりません。

豊田観自

プロフィール

豊田観自   代表/デザイン/製作

1985年 広島県生まれ。
大学卒業後、東京浅草の和太鼓・御神輿を製造販売する会社で営業職として働く。
その経験の中で、多くの「職人」と接して自分もモノを作る仕事をしたいと思い、
より日常的な「道具」を作りたいと考え、革製品のメーカーに転職。
2010年から大阪のレザーブランドで5年半、製造・販売に携わり、2015年独立。
自らデザイン、製作、販売までするファクトリーブランド「TSUKIKUSA」を立ち上げる。
革製品の製造に携わって12年ほど(2022年時点)
「小さい」ことと「使いやすい」ことを両立したお財布など、コンパクトな革小物を中心にアイテムを展開。
クラフトイベントへの出店からはじまり、近年は百貨店催事にも数多く出店中。