革小物の製作過程。
今日は「組み立て」についての説明です。
前回、前々回に書いた「裁断」「漉き」は材料の準備段階で、その準備できた材料を組み立てていくのがここからの工程になります。
例えばお財布であれば、材料を組み立てて「小銭入れ」「カードポケット」「札入れ(外本体)」などのパーツを作り、それを更に組み立ててお財布に仕上げていく、というような順番です。
「組み立て」はひとつの工程というより、細かないくつもの工程の積み重ねで、それも材料ごと、パーツごとに繰り返していく時間のかかる部分です。
あくまで一例ではありますが、TSUKIKUSAのお財布で言うと、以下のような工程があります。
・裏地の貼り合わせ
・銀面荒らし
・ノリ塗り
・貼り合わせ
・ヘリ返し
・ヤキネン
・縫製
・コバ磨き
・金具取り付け
これらは順番にやっていくということではなく、材料AとBを組み合わせてパーツAを作る過程でこれらのことをして、パーツAとパーツBを組み合わせてパーツCを作る過程でまたこれらの工程をするといった感じで複合的、重層的に組み合わさって、繰り返していきます。
今自分で書いていても、工程の多さに目眩がしますが、革小物づくりはこれらの地味な作業の繰り返しからなります。
この中でも、ある程度の技術や経験を必要としたり、特殊な道具を必要とする部分を以下のように分けて、ご紹介していきたいと思います。
・ノリ塗り+貼り合わせ
・ヘリ返し+ヤキネン
・縫製
・コバ磨き
今回は「ノリ塗り+貼り合わせ」についてです。
そもそも「ノリで塗って、貼ってるの?」「縫製してるんじゃないの?」と思った方も多いのではないでしょうか。
ノリを塗って、貼っていることに違いはないですが、それで終わりではなく、縫製をする際にズレないようにノリで仮止めをします
いわば布モノを作る際のマチ針のような役割です。
TSUKIKUSAで使用しているノリはこちら。
サイビノールという水溶性のノリで、革用のボンドといったところです。
粘度と接着強度によっていくつか種類はありますが、革小物の製作には一般的なものと言えます。
その他、鞄を作る時など、より強い接着力が必要な際はゴムノリを使用することもあります。
サイビノールは両面接着なので、貼り合わせる革の両方にノリを塗ります。
また半乾きの状態が最も接着力が強いので、ノリを塗ったあと、少しの時間置いてから貼り合わせます。
ノリをつけて貼るだけなら簡単、と思われそうですが、意外と難しいのがこの貼り合わせの工程です。
単純に端と端を合わせて貼っていくと、微妙な長さの差がたわみに繋がります。
革小物で、特に直線的なパーツ同士であれば1mmズレれば、見た目に違和感が出たりするので、作業そのものは簡単なようで、
細部も全体も見ながら作業を進めていかなければなりません。
貼ったあとには、上の写真のように圧着をしていきます。
二つ折りの財布や長財布など折り目がある構造で、
裏地がつくようなものの場合は、全体を曲げながら貼らないと、曲げた時にシワになったり、
開いた時につっぱりすぎたりするので、特に注意が必要です。
ものによっては専用の木型を使って、曲がり位置や、左右のバランスに目を配りながら、貼り合わせていきます。
下の写真は木型を使った貼り合わせです。
木型は自分で板を削って、ちょうどいい厚みとカーブに調節しています。
地味な工程ですが、全体の中の作業時間の多くをしめる工程となります。
そのパーツの大きさや、塗り幅に合わせて、複数のヘラを使い分けて、少しでも効率よく作業が出来るよう工夫をしています。
プロフィール
豊田観自 代表/デザイン/製作
1985年 広島県生まれ。
大学卒業後、東京浅草の和太鼓・御神輿を製造販売する会社で営業職として働く。
その経験の中で、多くの「職人」と接して自分もモノを作る仕事をしたいと思い、
より日常的な「道具」を作りたいと考え、革製品のメーカーに転職。
2010年から大阪のレザーブランドで5年半、製造・販売に携わり、2015年独立。
自らデザイン、製作、販売までするファクトリーブランド「TSUKIKUSA」を立ち上げる。
革製品の製造に携わって12年ほど(2022年時点)
「小さい」ことと「使いやすい」ことを両立したお財布など、コンパクトな革小物を中心にアイテムを展開。
クラフトイベントへの出店からはじまり、近年は百貨店催事にも数多く出店中。