TSUKIKUSA 公式オンラインストア

お財布をつくることを仕事にして早12年ほど経ちますが、この間でも世の中のお財布事情は大きく変わったように思います。

私がこの仕事をはじめた頃は、「お札は折らない方がいい」ということをテーマにした本が話題となっていた時期で、長財布がとても人気でした。

その後、スマホの普及やファッションの変化などで徐々にお財布の小型化が進んでいきましたが、コロナ禍を迎えて、キャッシュレス決済も浸透し、益々小さいお財布の需要が高まりました。

私はつくるだけではなく、催事などで売場に立つ機会も多いので、直接お客様の声を聞いたり、小さいお財布をお探しの方の接客をさせていただくこともあります。
そういった経験も元にしつつ、つくり手目線から考えた「小さい財布の選び方」について、TSUKIKUSAの製品をご紹介しながら書いてみたいと思います。

小さい財布に限りませんが、つくる時にまず考えることはどういった特徴(コンセプト)を持たせるかということです。
そしてそれはそのまま選ぶ時にも基準となる部分だと思います。
選ぶ上でも漠然と「小さい」ではなく、入れるものの取捨選択をして、小さい上でどのような要素を重視するかが大切です。
ざっくり分けると以下のようなことです。

目次

大きさ

  *ここで言う大きさは、縦×横の寸法のことです。
シンプルに小さければ小さいほど良いという考えの方におすすめするのは、「三つ折り型」のお財布です。
基本の構造としては、カードポケットを三つ並べて、左右のカードポケットを内側に折りたたむ形となります。

メリット:小さい・お札を折り畳まずに入れらる
デメリット:分厚くなる・小銭入れの収納力があまりない・お札に三つ折りの折り皺がつく

あくまで傾向としてですが、こういったところでしょうか。
狭い範囲にお札、小銭、カードを重ねていくことになるので、必然的に厚みは分厚くなってしまいますが、この一点を受け入れられるのであれば、有力な選択肢になるのではないでしょうか。

 

薄さ

薄くすることを重視する時に選択肢として上がるのは「札バサミ型」と「スリット型」です。

札バサミ型は、本体の真ん中にお札を挟むための金具がついているタイプです。

メリット:薄い・お札を折り畳まずに入れらる
デメリット:カード収納量が少ない・金具パーツの損傷、バネの緩みがありうる・小銭入れ付きが少ない

スリット型は、本体の上と横にL字型の切れ込みが入っていることで、革と革の間に二つ折りにしたお札を入れられるタイプです。

メリット:薄い
デメリット:カード収納量が少ない・お札を折らないと入れられない・小銭入れ付きが少ない

この2型は使い勝手の部分では慣れが必要なところもあるため、好みがわかれるところですが、お財布をおしりのポケットに入れるなど、薄さを重視する方にはおすすめです。
容量という点ではそれほど期待出来ないですが、スマホ決済に移行している方や、お財布とは別にカードケースをお持ちの方にとっては持ちやすい形だと思います。

収納力

前提として、長財布、特にアコーディオン型や、ラウンドファスナータイプの大容量の財布から、小さな財布に移行した場合、どうしても収納力の面では劣ってしまいます。
その上で、比較的収納力がある小さな財布となると「二つ折り型(小銭入れ外付き)」タイプがあげられます。
このタイプだと内側が左右両面カードポケットに出来るので、ある程度の収納力を確保することが可能になります。

メリット:それなりの収納力・使いやすい
デメリット:分厚くなる

出来るだけ小さくしたいと言いつつ、カードはなかなか減らせない、となるとこの形になってきます。

機能性(使いやすさ)

使いやすさを考える時は、バランスが大事です。
そこそこ容量もあって、そこそこコンパクトに収まり、カード収納も段々になっている方が出し入れがしやすくなります。
使い勝手を考えると結果的に普通の二つ折り財布がいいということになるのですが、それだとやはり大きいので、なにかしらの工夫を加えることで、コンパクトに収めた「二つ折り型」が機能性の高いものであると言えます。

メリット:使いやすい
デメリット:なし

このタイプは特別なデメリットはないですが、逆に言うと「小ささ」「薄さ」に特化したタイプと比べると少し大きくなります。
今までは一般的な折り財布や、長財布を使っていた方がはじめて小さい財布を持つ場合や、小ささに特化したタイプを使ってみて、やはり使いづらいと感じた方におすすめしたい形です。

財布は「持ち歩き」「使う(支払う)」ものなので、財布を選ぶ時、その使用頻度がとても重要なのではないかと私は考えています。
例えば、実家暮らしの学生さんと、ご家族のいる主婦の方では財布を使う頻度が違うはずです。
それでも出かける時には同じように財布を持ってでかけます。

毎日何度も出し入れして、複数のカードを使い分けて、お札、小銭、カードを全て使う方であれば、重視すべきは使い勝手です。
一方、普段お金を使うのはランチの時くらいで、あと週末に時々買い物に行く、というくらいで財布はポケットの中に入っている時間が長いという人は、多少の使いにくさには目をつむってもいかに小さく、薄く持つかの方が重要ではないでしょうか。

まずはお財布に絶対入れておきたいものを確認して、その上で普段の生活からサイズを優先するのか、使い勝手を優先するのか、優先順位を考えていただけたらと思います。

ここに挙げた以外にも、TSUKIKUSAでは現状つくっていない「L字ファスナー型」「被せフタ型」など各メーカーさん、つくり手さんが工夫をして、いかに小さく、使いやすくするかを考えています。
様々なものを見比べて、お気に入りのお財布を見つけてください。

豊田観自

プロフィール

豊田観自   代表/デザイン/製作

1985年 広島県生まれ。
大学卒業後、東京浅草の和太鼓・御神輿を製造販売する会社で営業職として働く。
その経験の中で、多くの「職人」と接して自分もモノを作る仕事をしたいと思い、
より日常的な「道具」を作りたいと考え、革製品のメーカーに転職。
2010年から大阪のレザーブランドで5年半、製造・販売に携わり、2015年独立。
自らデザイン、製作、販売までするファクトリーブランド「TSUKIKUSA」を立ち上げる。
革製品の製造に携わって12年ほど(2022年時点)
「小さい」ことと「使いやすい」ことを両立したお財布など、コンパクトな革小物を中心にアイテムを展開。
クラフトイベントへの出店からはじまり、近年は百貨店催事にも数多く出店中。